行政書士の開業準備では、登録、事務所、所属する会への手続きなど、先に決めることが続きます。その間にホームページや地図の情報まで完璧にしようとすると、かえって公開が遅れます。
Webで最初に整えたいのは、すべての業務を説明する大きなサイトではありません。事務所の基本情報、重点の1〜2業務のページ、相談の入口の3つです。この3つがあれば、相談する人は「ここは何を扱う事務所か」「自分の相談をしてよいか」「どう連絡すればよいか」を判断できます。
この記事では、行政書士の開業で必要な手続きは一次情報への案内にとどめ、開業前後のWeb準備を中心に整理します。
開業準備全体は一次情報で確認し、Webは並行して進める
登録の手続きや事務所の要件は、Webの記事だけで判断しないことが大切です。日本行政書士会連合会の「新規登録の手続」は、登録申請に必要な書類を案内しています。事務所の所在などを確認するための書類が必要になる場合があり、都道府県行政書士会が会則で定める書類もあるため、詳細は事務所を設けようとする都道府県行政書士会に確認するよう示しています。[1]
行政書士法第8条は、行政書士が業務を行うための事務所を設けること、原則として二以上の事務所を設けられないことを定めています。[2] 行政書士職務基本規則第8条は、秘密を保持できる明確な区分と、他人が容易に侵入できない構造を求め、事務所であることを明らかにした表札の掲示も定めています。[3]
このため、サイトや地図に載せる名称・所在地・連絡先は、登録や事務所の準備と切り離さずに扱います。ただし、Webの公開を登録手続きの案内代わりにする必要はありません。確定した情報から準備し、未確定の情報は公開しない、という順番が安全です。
最初にそろえるのは「同じ基本情報」です
開業直後にWebで迷ったら、まず事務所の基本情報を1枚にまとめます。ホームページ、Google ビジネス プロフィール、名刺、相談フォームで表記が違わないようにするためです。
- 事務所名・行政書士氏名
- 所在地と、来所相談の扱い(予約制かどうかを含む)
- 電話番号、メールアドレス、受付時間
- 対応地域
- 重点業務
- 相談方法と、最初の返信の目安
所在地を公開するタイミングは、事務所の準備と登録情報の扱いを確かめて決めます。自宅を事務所とする場合も、住所を省略したり別の所在地を載せたりする前に、所属予定の行政書士会へ確認してください。住所を載せるなら、来所が予約制か、相談はオンラインにも対応するかまで書くと、訪問前の行き違いを減らせます。
Google ビジネス プロフィールは、営業時間中に顧客と対面でやり取りする事業が対象だとGoogleが案内しています。オンラインだけで相談を受ける形は対象外とされているので、来所や訪問の有無も確かめます。オーナー確認が完了すると、Google検索とGoogleマップでプロフィールを変更・管理できます。[4] 対象となる形態と掲載内容を公式ヘルプで確認したうえで、ホームページと同じ名称、電話番号、営業時間、サイトURLを登録します。地図だけ先に作り、サイトと内容が食い違う状態は避けます。
業務ページは、重点の1〜2業務から始める
「対応業務」をたくさん並べても、相談する人が自分の状況に当てはめられなければ、連絡にはつながりにくいものです。開業時は、経験を積みたい、紹介を受けやすい、地域で需要を見込むと考える業務を1〜2つ選び、それぞれにページを作ります。
たとえば在留資格を重点にするなら、外国人本人向けか雇用する会社向けか、どの相談を受けるかを先に示します。建設業許可なら、新規・更新・業種追加のうち対応する範囲と地域を分けます。相続・遺言なら、遺言書作成支援、遺産分割協議書の作成支援など、扱う内容を具体的にします。できないことまで広く書く必要はありません。
最初の業務ページには、少なくとも次の6点を置きます。
- どんな人・会社からの相談か
- 対応する手続きや支援の範囲
- 相談から完了までのおおまかな流れ
- 準備するとよい情報・資料
- 報酬の考え方と、個別見積もりになる条件
- 相談への入口
行政書士職務基本規則第17条は、ホームページやSNSを含む広告宣伝について、事実に合致しない内容、誤認や誤導のおそれのある内容、誇大な内容を禁止しています。[3] 「必ず許可される」「最短で取得できる」といった表現よりも、受けられる相談の範囲と、確認が必要な点をそのまま書くほうが、相談の入口としても機能します。
相談の入口は、連絡先だけで終わらせない
電話番号やメールアドレスを載せることは第一歩です。加えて、相談する人が連絡前に迷わないよう、相談フォームか案内ページに「何を伝えればよいか」を用意します。
最初に聞く項目は多すぎなくて構いません。重点業務に応じて、次のように絞ります。
| 業務 | 最初に聞くことの例 |
|---|---|
| 在留資格 | 本人か雇用企業か、希望する手続き、在留期限 |
| 建設業許可 | 新規・更新などの区分、法人・個人、希望時期 |
| 相続・遺言 | 相談したい内容、相続開始の有無、希望する相談方法 |
どの業務にも共通して、「いつまでに必要か」「いま何が分からず困っているか」「連絡しやすい方法」は聞けます。氏名や詳細な資料を最初から多く求めるより、相談の概要を伝えられる形のほうが、送信する側も判断しやすくなります。
返信の目安も書きます。たとえば「内容を確認のうえ、2営業日以内を目安に返信します」のように、実際に守れる範囲で決めます。フォームを公開したら、自分のスマートフォンで送信し、受信通知と返信の流れを一度確かめてください。
開業前から3か月までのWeb準備チェックリスト
LawProが2026年9月22日から25日に正常に開けた行政書士サイト897件を実測したところ、更新日の情報を取得できたサイトは19.0%、構造化データを確認できたサイトは49.3%、sitemap.xml を確認できたサイトは64.4%でした。[5] 構造化データは、ページの情報を検索エンジンに伝える書き方です。サイトマップは、サイト内のページ一覧を伝えるファイルです。
これらは公開後に確認したい項目ですが、開業日にすべてを作り込むより、相談者に伝わる情報を先にそろえるほうが進めやすいです。LawProの点検表12項目から、開業前後で優先したい内容を時期ごとに並べると、次のようになります。[5]
開業前
- 事務所名・所在地・電話番号・受付時間を確定し、載せる表記を1つに決めた
- トップページで、地域・重点分野・対象者が1行で分かる
- 重点の1〜2業務に、個別のページを用意した
- どのページからも相談の入口に進める
- 相談フォームに、分野・時期・不安を伝える欄を設けた
開業1か月
- ホームページとGoogleの情報で、事務所名・所在地・電話番号が一致している
- 相談の流れ、代表の考え方、返信の目安を載せた
- 業務ごとの報酬の目安と、別にかかる費用の扱いを整理した
- スマートフォンで表示とフォーム送信を確認した
- 更新日をページに表示する運用を決めた
報酬額の掲示や公表には決まりがあります。ホームページの準備と合わせて、事務所内での掲示や様式を所属する行政書士会に確認してください。職務基本規則第24条は、報酬額表を事務所の見やすい場所に掲示し、インターネットなどで公表するよう努めることを定めています。[3]
開業3か月
- 実際の相談でよく聞かれた質問を、匿名化して業務ページや記事に足した
- 「地域名+重点分野」で検索し、どのページが出るかを確認した
- サイトマップと構造化データの設定状況を確認した
- 問い合わせの分野・時期・不安を記録し、次に足すページを1つ決めた
記事を増やす前に、重点業務のページと相談の入口を見直してください。検索のためだけにページ数を増やすより、届いた質問に答えるページを足すほうが、開業直後の発信は続けやすくなります。
まとめ:Webは「公開して、相談から育てる」
行政書士の開業準備でWebに最初から必要なのは、完成した大規模サイトではありません。
- 事務所の基本情報を、サイトと地図で同じ表記にする
- 在留資格、建設業許可、相続・遺言など、重点の1〜2業務を具体的に示す
- 相談する人が状況を伝えられ、返信の目安が分かる入口を作る
まずは、重点業務を1つ選び、「誰の、どんな相談を受けるか」を100字で書いてみてください。その文章が、トップページと最初の業務ページの土台になります。
関連記事: 行政書士のホームページの作り方/行政書士の集客方法/行政書士の専門分野の決め方
LawProは、行政書士事務所の相談ナビ・相談管理・発信を支援する仕組みです。今のサイトで、相談の入口や重点業務が伝わっているかを確かめたいときは、無料サイト診断をご利用ください。
この記事について
公開日:2026年10月25日
確かめた日:2026年10月23日
出典
- 日本行政書士会連合会「新規登録の手続」(2026年10月23日確認)
- e-Gov法令検索「行政書士法」第8条(2026年10月23日確認)
- 日本行政書士会連合会「行政書士職務基本規則」第8条・第17条・第24条(2026年10月23日確認)
- Google ビジネス プロフィール ヘルプ「Google ビジネス プロフィールのスタートガイド」(2026年10月23日確認)
- LawPro「選ばれる士業事務所の情報発信 2026レポート」第3章「士業サイト2,219件の実測と、47件の内容分析」、第7章「点検表:あなたの事務所サイトで確かめたい12項目」(2026年10月23日確認)