行政書士がホームページ制作を依頼するとき、制作会社ごとの見積もりを比べても、何が違うのか分かりにくいことがあります。見た目や金額だけで選ぶ前に、「何を載せるか」と「公開後に誰が更新するか」を決めると、比較する条件がそろいます。
たとえば在留資格、建設業許可、相続では、相談者が知りたい内容も、ページを直す頻度も同じではありません。この記事では、行政書士が士業のホームページ制作会社に依頼する前に整理することと、見積もりで確かめたい項目を紹介します。
制作会社を探す前に、相談の受け皿を決める
ホームページは、事務所の案内を置くだけの場所ではありません。紹介、検索、SNSなどで事務所を知った人が、「自分の相談を受けてもらえるか」を確かめる場所です。
制作会社に相談する前に、重点にする業務ごとに次の内容をメモします。文章として完成していなくてもかまいません。このメモが、必要なページ数と原稿作成の範囲を決める材料になります。
- 相談者は誰か。地域、本人・企業などの立場、困っている場面を分ける
- どの手続きや支援を扱うか。対応しない範囲も整理する
- 相談から依頼、完了までをどう進めるか
- 報酬と別にかかる費用を、どのページでどう案内するか
- 問い合わせ時に、何を聞くか
在留資格なら、外国人本人と雇用する企業のどちらに向けるか、更新・変更・認定証明書交付のどこを扱うかを分けます。建設業許可なら、新規・更新・業種追加、対応地域を明らかにします。相続では、遺言書作成支援、相続人調査、遺産分割協議書の作成支援など、事務所で対応する範囲を書き出します。
ここが曖昧なままでは、制作会社は必要なページや原稿の量を判断できません。反対に、相談の受け皿が決まっていれば、各社に同じ資料を渡して、近い条件で依頼内容を比べられます。
「更新する人」を先に決めると、公開後に困りにくい
公開時の内容だけでなく、誰がいつ直すかも依頼前に決めます。行政書士の業務ページは、対応範囲、相談の流れ、費用の案内、受付状況などを見直す場面があります。制度や手続に触れる内容は、正確さを確かめてから更新する運用が必要です。
更新の役割は、主に次の3つに分かれます。
- 事務所が管理画面で文章・写真を直す
- 事務所が原稿を送り、制作会社が反映する
- 定期的な見直しを依頼し、内容を一緒に整理する
どれがよいかは、Webの経験だけで決まりません。月に何度も自分で直したいのか、変更をためてから依頼したいのかで、求める仕組みが変わります。見積もりでは「更新対応あり」だけで判断せず、誰が、どの作業を、どの方法で行うのかを確かめます。
たとえば建設業許可のページに対応地域を加える作業と、新しい在留資格の解説ページを作る作業では、必要な確認や原稿の量が違います。軽い修正と新規ページ作成を同じ「更新」として扱わず、分けて聞くと条件を比べやすくなります。
見積もりは、金額ではなく条件をそろえて比べる
士業のホームページ費用は、ページ数、原稿の有無、写真や図の用意、問い合わせフォーム、更新の仕組み、公開後の支援などで変わります。そのため、一般的な金額の幅だけでは、依頼内容に合うかを判断できません。
次の表を使い、候補ごとに同じ内容を確認します。回答が曖昧な項目は、契約前に書面や見積書で具体化します。
| 確かめる項目 | 制作会社に聞くこと | 事務所で決めること | 見積もりが変わる理由 |
|---|---|---|---|
| 原稿 | ヒアリングから原稿作成まで含むか。修正回数はどうか | 業務説明、代表紹介、費用・流れの資料を誰が用意するか | 取材・執筆・確認の工数が異なる |
| ページ数 | 何ページを、どの構成で作るか | 最初に公開する業務と、後から足す業務 | 業務別ページや記事の数で作業量が変わる |
| 更新の手段 | 自分で直せる場所、操作説明、修正依頼の方法 | 自分で直す範囲と、依頼する範囲 | 管理画面の設定、操作支援、反映作業が異なる |
| ドメイン・サーバー | 契約者・登録者は誰か。管理画面は誰が使えるか | 事務所の連絡先と支払方法をどう管理するか | 取得代行、設定、管理の範囲が異なる |
| 解約時の扱い | データ、ドメイン、サーバー、メールをどう引き継ぐか | 継続利用したいものと、保管したいデータ | 移管やデータ出力の対応範囲が異なる |
| 士業の広告への理解 | 原稿確認の進め方と、表現で注意する点 | 最終確認を誰が行うか | 業務内容を正確に反映するための確認が必要になる |
比較表に「含む」「含まない」だけを書くより、具体的な成果物も書きます。たとえば「建設業許可、在留資格、相続の3業務ページ」「問い合わせフォームに聞く項目を設定」「公開後は事務所が文章を修正」のように残します。制作会社ごとの提案の違いも、条件から外れた追加提案として読めるようになります。
ドメインとサーバーは、事務所が確認できる状態にする
ドメインは、ホームページの住所にあたる文字列です。サーバーは、ホームページやメールのデータを置く場所です。制作を任せる場合でも、契約先、ログイン方法、請求先、更新時期を事務所側で確認できるようにします。
JPRSは、gTLD等ドメイン名について、登録者または登録組織に記載された個人・組織が登録者等となることを案内しています。また、制作会社や管理会社など第三者の連絡先が登録されている場合は、登録者または登録組織自身の連絡先に変更するよう案内しています。JPRS「登録情報のご確認のお願い」
この案内を踏まえ、少なくとも次の点を依頼前に確認します。
- ドメインの登録者または登録組織は、誰になるか
- ドメインとサーバーの管理画面に、事務所が入れるか
- 登録情報の連絡先メールアドレスを、誰が受け取るか
- 制作会社を変えるとき、ドメイン、サイトデータ、メールをどう引き継ぐか
JPドメイン名などの登録情報は、JPRS WHOISで確認できる場合があります。JPRSはWHOISで、登録者が誰か、登録者の連絡先、ネームサーバー情報などを確認できると説明しています。JPRS「JPRS WHOISで確認できること」 公開方法や確認できる項目はドメインの種類によって異なるため、契約中のサービスの案内もあわせて確認してください。
行政書士の広告として、原稿の確認の流れを持つ
ホームページは、公開後も広告宣伝の一部です。行政書士職務基本規則第17条は、ホームページやSNS等によるものを含む広告宣伝について、不当な目的を意図するもの、品位を損なうおそれのあるものを行ってはならないと定めています。事実に合致しない内容、誤認または誤導のおそれのある内容、誇大な広告宣伝も同条で禁止されています。行政書士職務基本規則
これは制作会社が法律上の判断を代わりに行うという意味ではありません。事務所が、掲載する業務範囲、実績・資格・対応地域、費用の案内を最終確認する流れを、依頼内容に入れておくことが大切です。
たとえば「最短」「必ず」「専門」といった表現を使うかより先に、どの事実にもとづいて書くかを確認します。制作会社には、原稿の確認担当者、確認期限、公開前の最終承認方法を聞いておくと、修正の往復を減らせます。広告の考え方は、行政書士の広告の決まりも参考にしてください。
依頼前に、1枚の依頼メモを作る
見積もりを頼む前に、次の内容をA4で1枚程度にまとめます。整った提案書を作る必要はありません。比較する候補すべてに同じメモを渡すことが目的です。
- 事務所名、対応地域、重点業務
- 在留資格、建設業許可、相続のうち、最初に掲載する業務
- 各業務ページで伝えたい対象者、対応範囲、相談の流れ、費用の案内
- 用意できる原稿、写真、ロゴ、報酬額表などの資料
- 問い合わせ方法と、フォームで最初に聞きたい項目
- 公開後に事務所で更新したい内容と、制作会社に依頼したい内容
- ドメイン・サーバー・メールの現状と、分かっていない点
- 公開希望日ではなく、先に決める必要がある内容と確認担当者
このメモがあれば、「行政書士のホームページ制作会社」を探して比較するときも、打ち合わせごとに説明をやり直さずに済みます。提案を受けたら、機能が多いかではなく、重点業務の相談者が必要な情報にたどり着ける構成か、公開後に自分たちで保てるかを見ます。
ホームページ全体の構成を考える段階なら、行政書士のホームページの作り方と、行政書士のホームページの参考例もあわせて読んでください。
まとめ:比較の前に、依頼する中身をそろえる
ホームページ制作会社を選ぶときは、見積もりの金額だけで順番を決めません。
- 重点業務ごとに、誰に何を伝えるかを先に決める
- 公開後の更新を、事務所と制作会社のどちらが担うか決める
- 原稿、ページ数、更新、名義、解約時、広告確認を同じ条件で比べる
まずは、在留資格、建設業許可、相続のうち、最初に載せる業務を一つ選びます。そのページで相談者に伝えることをメモにし、候補の制作会社へ同じ条件で渡してみてください。
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この記事について
公開日:2026年10月26日
確かめた日:2026年10月23日
出典:
- 日本行政書士会連合会「行政書士職務基本規則」(第17条、2026年10月23日確認)
- JPRS「登録情報のご確認のお願い」(2026年10月23日確認)
- JPRS「JPRS WHOISで確認できること」(2026年10月23日確認)