開業して1〜3年ほどは、知り合いからの紹介や、たまたま来た問い合わせが仕事の中心になりやすい時期です。紹介は信頼を引き継いで相談につながる大切な入口です。ただ、紹介元の状況に仕事量が左右されるため、忙しい月と空く月の差が大きくなることがあります。
行政書士の営業の仕方は、紹介を増やすことだけではありません。紹介元との関係、自分で見つけてもらう発信、既存のお客さまから次の依頼につながる状態。この3本を少しずつ整えると、仕事の入口を一つに頼らずに済みます。
この記事では、行政書士の仕事の取り方と営業先の考え方を、建設業許可・在留資格・相続の例でまとめます。紹介料についても、行政書士職務基本規則の条文に沿って確認します。
仕事が来る入口を、3本に分けて考える
営業というと、新しい人に会い続けることを想像するかもしれません。しかし、毎週の予定に入れたいのは「誰かに覚えてもらう」「検索や紹介で見つけてもらう」「一度相談した人がまた頼める」の3つです。
1本目は、他士業、金融機関、不動産会社、建設会社など、相談者と先に接点を持つ人との関係です。相手に案件を求める前に、自分がどの相談を、どんな流れで受けられるかを知ってもらいます。紹介後の連絡が早く、進み具合が分かることも、次に思い出してもらう理由になります。
2本目は、事務所サイト、記事、地図情報などから自分で見つけてもらう入口です。「建設業許可の更新はいつから準備するか」「外国人を採用するときに、会社が最初に整理すること」のように、相談前によく聞かれる疑問に答えます。紹介が少ない月にも、新しい相談者と出会う土台になります。
3本目は、既存のお客さまです。手続きが終わったら関係が切れるのではなく、次に必要になりやすい時期や、相談できる範囲を分かる形で伝えます。ただし、不要な連絡を増やす必要はありません。依頼時に「更新時期が近づいたら案内を希望するか」を確認する程度から始めるとよいでしょう。
行政書士の営業先は、業務ごとに「相談の起点」を探す
営業先を広く並べるより、重点にする業務について「誰が最初に困りごとを聞くか」を考えます。相談先の候補として、自分の対応範囲と連絡方法を知ってもらいます。
| 重点業務 | 相談の起点になりやすい相手 | 伝えておく内容 | 自分で見つけてもらう発信 |
|---|---|---|---|
| 建設業許可 | 建設会社、税理士 | 新規・更新・業種追加の対応範囲、必要な準備、連絡の目安 | 更新時期から逆算した準備、決算変更届との関係 |
| 在留資格 | 企業の人事担当者、採用支援に関わる会社 | 対応する在留資格、会社側に最初に確認したい情報 | 採用前に確認したい事項、手続きの流れ |
| 相続 | 金融機関、不動産会社、葬儀社 | 扱う書類・手続きの範囲、初回に分かるとよいこと | 相続開始後に整理する情報、相談から進む流れ |
たとえば建設業許可を重点にするなら、建設会社と顧問税理士の双方に、更新の時期に何を確認するかを短い1枚にまとめます。相手が紹介しやすいのは、「建設業許可を扱っています」という言葉より、「更新の数か月前から状況を確認し、必要書類と日程を整理します」という具体的な案内です。
在留資格では、企業の人事担当者にとって、採用を決めてから急いで調べる場面が少なくありません。会社側に最初に確認したい事項、相談から申請までのおおまかな流れ、対応できる範囲を分かるようにしておくと、相談前の行き違いを減らせます。
相続では、金融機関、不動産会社、葬儀社などが、ご家族から最初の質問を受けることがあります。遺産分割協議書の作成支援など、事務所が扱う範囲を明確にし、個別の事情によっては他の専門家への相談が必要になることも、誤解のない形で案内します。
紹介元との関係は、「紹介してください」より先に整える
紹介元に一度あいさつをしただけで、継続して仕事が来るわけではありません。紹介された相談に対応しやすい事務所だと知ってもらうことが大切です。次の3点をそろえると、相手も説明しやすくなります。
- 何の相談を受けるか。対応しない範囲も含めて、重点業務を短く伝える。
- 最初の相談で何を聞くか。資料がそろっていなくても相談できるのかを示す。
- 紹介後にどう連絡するか。受けられるかの返答や、次の案内の目安を決める。
紹介後は、お客さま本人の同意と守秘に配慮しながら、必要な範囲で紹介元に連絡します。「受け付けた」「次に何を確認するか」が分かるだけでも、紹介元は安心しやすくなります。
建設業許可なら更新準備の案内、在留資格なら公的な情報とともに整理した記事、相続なら初回相談で聞く項目を共有します。相手がお客さまへの説明に使える情報を渡すほうが、単に名刺を置くより関係が続きます。
発信と既存のお客さまで、紹介以外の入口をつくる
発信では、実際に受けたい相談を一つずつ具体的にします。建設業許可なら「更新が近い会社が確認すること」、在留資格なら「採用担当者が相談前に整理すること」、相続なら「最初の相談で分かると進めやすいこと」といった題材です。期限や要件は変わり得るため、公開日・更新日と公的な根拠を添えます。
LawProが2026年10月5日に行政書士事務所47件の主なページを調べたところ、典型的な疑問に十分に答えていると判定できた事務所は0件でした。各サイト最大5ページを見た調査のため、ほかのページに情報がある可能性はあります。[1]
既存のお客さまには、業務ごとに次の接点を考えます。建設業許可なら、依頼時に確認した希望に応じた更新時期の案内です。在留資格なら、雇用状況や更新時に必要な確認の案内です。相続なら、完了時に手続きの範囲と、今後相談が必要になったときの連絡先を伝えます。案内する場合は、連絡の可否と方法をあらかじめ確認し、必要以上に個人情報を持ち続けない運用も決めておきます。
問い合わせが増えたら、入口も整えます。フォームや電話で、分野、希望時期、不安、費用や進め方で気になることを先に聞けるようにします。最初の返信では「受け取りました」「次にすること」「いつまでに」の3点を伝えると、相談者も待ち方が分かります。[1]
週に1時間から始める、営業の動き方
三つの入口を同時に大きくしようとすると続きません。週に1時間でも、固定した小さな動きを置くほうが、仕事の波をならす準備になります。
| 曜日・時間の例 | すること | 残すもの |
|---|---|---|
| 月曜15分 | 先週の相談を「分野・時期・不安」で振り返る | 次の記事の題材を1つ |
| 水曜15分 | 紹介元1人に、役立つ案内や近況を送る | 連絡日と話題の記録 |
| 金曜20分 | 重点業務の疑問に短く答える記事を下書きする | 300〜500字の下書き |
| 月末10分 | 完了した依頼で、次に案内が必要な時期を確認する | 本人の希望を含む案内予定 |
最初の1か月は、営業先を増やすより、重点業務を一つ決めてください。その業務の紹介元を3人挙げ、相談前の疑問を3つ書き出し、既存のお客さまへの案内が必要な時期を確認します。この3つがそろうと、翌月に何をするかを決めやすくなります。
行政書士の紹介料は「一律に違法」と決めつけず、規則と仕組みを確認する
「行政書士の紹介料は違法か」と聞かれても、すべてのやり方を一律に合法・違法と答えることはできません。誰が誰に何の対価を支払うのか、依頼者の報酬にどう反映されるのかで確認点が変わります。
日本行政書士会連合会の行政書士職務基本規則第15条は、不当誘致行為を禁じています。同条第2項は、金品の提供、供応その他不当な行為により業務の依頼を誘致してはならないと定めています。さらに第3項は、依頼者の紹介を受けたことについて、その紹介の対価を依頼者の報酬に上乗せしたり、職務内容と比較して法外な金額を請求したりしてはならないと定めています。第4項は、行政書士が依頼者の紹介をしたことについて、その対価を要求してはならないと定めています。[2]
少なくとも、紹介に関する費用を依頼者の報酬に上乗せすることや、行政書士自身が依頼者を紹介した対価を要求することは、この条文に照らしてできません。紹介元との取り決めを考えるときも、紹介を得るための金品提供に当たらないか、依頼者への説明と報酬額が適切かを、契約や支払いの前に確認してください。
行政書士法も、第10条で行政書士の信用または品位を害するような行為を禁じ、第1条の2で品位を保ち、公正かつ誠実に業務を行うことを求めています。[3] 紹介の対価を含む個別の取り決めは、条文だけで結論を急がず、所属する行政書士会に事実関係を示して確認するのが安全です。紹介を受ける側・する側、金額や名目、広告との関係によって見方が変わり得るからです。
まとめ:紹介を大切にしながら、三つの入口を育てる
行政書士の営業は、紹介を捨てて発信だけに切り替える話ではありません。紹介元が安心して相談先に挙げられる関係をつくり、自分で見つけてもらう答えを積み上げ、既存のお客さまが次の相談をしやすい状態にする。その三つを持つことが、仕事の波を小さくする助けになります。
まずは重点業務を一つ選び、その相談の起点になる人を3人、サイトで答える疑問を3つ、次に案内する時期を一つ書き出してみてください。今週の営業は、そこから始められます。
LawProは、相談する人が分野・時期・不安を整理できる相談ナビ、相談管理、よくある疑問を伝える発信の支援を通じて、事務所の相談の仕組みづくりをお手伝いします。今の発信や相談の入口を整理したい先生は、無料サイト診断をご利用ください。
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この記事について
公開日:2026年10月25日
確かめた日:2026年10月23日
出典:
- LawPro「選ばれる士業事務所の情報発信 2026レポート」第3章・第5章・第6章。内容分析は行政書士事務所47件を2026年10月5日に調査。各サイトのトップと主なページ(最大5ページ)が対象です。
- 日本行政書士会連合会「行政書士職務基本規則」第15条(PDF、令和8年7月15日施行の版)(2026年10月23日確認)
- e-Gov法令検索「行政書士法」第1条の2・第10条(2026年10月23日確認)